楽器をやりたい初心者のための講座 ―平均律と純正律①―
我々が当たり前に使っている音階、実はその音階の作り方(音律)にも種類があります。
代表的なのは平均律と純正律です。
そもそも、音階をドレミ…やらCDE…と呼べるのは、人間が勝手に音階のルールを作っているからです。
音楽や使う人が変われば音階の在り方も変わってしまうということですね。
今回は2つの内、平均律を初心者でもわかりやすいように解説していきます。
この知識と前回の倍音の知識を合わせることで、ハーモニーの作り方がより理解しやすくなりますよ。
前提として
平均律を説明する前に、今回の音律の話の前提を押さえておきます。
それは「基準音から周波数2倍の音はオクターブ上の音」ということです。
基準音がA=880Hzだったら、2倍の1760Hzの音はオクターブ上のAの音となります。
この前提は平均律でも純正律でも変わりません。
平均律とは
平均律とは、「音程幅が同じなら、周波数比が同じ音律」を指します。
言ってることがよくわかりませんね。
A=880Hzとして、オクターブ上のA=1760Hzまでを考えてみましょう。
この場合、音階は以下の様に周波数が決まります。
(説明に必要な部分だけ抜粋)
A=880Hz
A#=932.3Hz
B=987.8Hz
…
E=1318.5Hz
F=1396.9Hz
F#=1480.0Hz
…
A=1760Hz
このとき、半音関係のAとA#の周波数比は
932.3 ÷ 880=約1.06
同じく半音関係のEとFの周波数比は
1396.9 ÷ 1318.5=約1.06
となり、全く一緒なのが分かります。
また、全音(半音2つ)関係にあるAとB、EとF#を比べても
987.8 ÷ 880=約1.12 1480.0 ÷ 1318.5=約1.12 と周波数比が同じです。
もちろんほかの音程幅でも同様のことが言えます。
このように同じ音程幅なら違う音同士でも周波数比も同じになるのが平均律です。
平均律はどの音でも基準になれる
平均律のいいところは、「どの音でも基準になれる」ことにあります。
周波数比が変わらないのでどこから始めても同じ音程幅なら関係性が一緒になるからです。
従って、曲ごとに調が変わっても、曲途中で転調しても問題なく対応できます。
いろんな曲に対応できるので現代音楽では重宝されていますよ。
平均律は倍音とずれがある
一方で平均律には悪いところもあります。
「倍音と微妙に一致しない」ことです。
例えば、A=880Hzの5度上のEの音は、
Aの3倍音のオクターブ下なので、倍音上はE=880 × 3 ÷ 2 =1320Hzとなります。
簡単に言えば、880HzのAに1320HzのEを重ねれば綺麗にハーモニーが作れるということですね。
しかし、さっき紹介した平均律のEは
E=1318.5Hz
でした。
差にするとおよそ1.5Hz違いますね。
他の音も同様で、Aの倍音から微妙にズレています。
このズレは、ハーモニーを微妙に曇らせてしまうのです。
ただ、臨時でハーモニーの5度上や3度上の音を調整して、きれいなハーモニーを作ることは可能です。
まとめ
今回の平均律についてまとめると
平均律は
- 「同じ音程幅では周波数比が一緒になる音律」のこと
- どの音も基準に出来、転調などが容易
- 倍音と実際の音の微妙なずれでハーモニーがわずかに曇る
というものでした。
平均律は現代の多くの音楽で使われているため、この知識があることで、ただ音を重ねるのではなく、重ねた音を調整する発想が生まれます。
ハーモニーを作る際に気を付ければ、周りよりきれいなハーモニーを作れますので気にしてみてくださいね。
次回は純正律についてご紹介していきます。